運輸業界最大手・ヤマト運輸の
働き方の実のところを
聞きに行った。
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こんにちは!京都のフリーランスライター、社領エミです!
みなさん。運輸業のドライバーさんって、過酷なイメージがありませんか…?
インターネットがあらゆる世代に浸透したことで、ますます利用されているネット通販。運輸業界全体の荷物量は年々数を増し、いまや本1冊、雑貨1点でも1人のドライバーさんがわざわざ届けてくれる時代になりました。
しかしそれって大丈夫なんでしょうか? ドライバーさん、めちゃめちゃ無理してない……?
私たちが通販で配送を多用し、時には何度も再配達することで、ドライバーさんの仕事がめちゃめちゃ重労働になっていたらどうしよう!「ブラック企業」という言葉が世の中に定着した今の時代、やっぱり気になってしまいます。
みんなが配送に頼りすぎて、運輸の現場はパンクしちゃわないの……?
ドライバーさんの働く環境が過酷ってよく聞くけど、運輸業界、この先大丈夫なの〜!?
うーん、気になる〜!
というわけで、業界最大手のヤマト運輸株式会社の方にお話を伺いました!
今回お話をお伺いするのは、ヤマト運輸の内情にお詳しい西大阪主管支店 人事総務課 課長の藤本さん(左)と、大阪南堀江センター センター長、ドライバー歴11年目の森さん(右)のお二人。
運輸業界のトップを走るヤマト運輸さんは、自動運転車での配送を想定したロボネコヤマトなど、新しい配送方法に積極的に取り組んでいらっしゃいます。
そんな、運輸業界の未来づくりに積極的なヤマト運輸さん、昨今の「過酷なドライバーさんの現状」についてどう思われているんでしょう?
運輸業界の未来についても、ズバッと聞いていきたいと思います!
SECTION01
『ドライバーの仕事は
過酷すぎる!』 って本当なの?
- 今日はよろしくお願いします!まず、ドライバーさんの働き方についてお伺いさせてください。森さん。正直言って、運輸業ってめちゃめちゃ過酷ですよね……! お辛いだろうと思います!
- ……過酷。
- はい。
- ……そうでもないと思いますけど……。
- えっ!? う、嘘だ〜! ものすごく忙しいんですよね?
- 月によりますよ。忙しい時は忙しいですけど、お中元やお歳暮以外の時期は休みも多いですし。
- 1日に何度もある再配達に腹が立ったり……。
- ないですねぇ。
- 指定時間に配送するのにてんやわんやだったり……。
- 大変な時はまぁ必死ですけど、時間内に届けるのは仕事としてそういうもんですし当然のことなので。
- 荷物に対して『コノヤロー!!』って殴りかかりたくなったり……!?
- 別にならないですね。僕、ドライバー辞めたいと思ったことないですよ。
- ……人事の方が横にいるから嘘をついているのでは!?
- それはないですよ!(笑)公休・年休・ボーナスもあるし、福利厚生もしっかりしているし、休憩もしっかり取れるので。おおむね楽しく働いてますね。
- うそ〜!?
ど、どうやら、私が考えていた「ドライバーの仕事は過酷である」という前提から間違っている…?!なんてこった、記事の趣旨が変わってしまう!
SECTION02どうしてヤマト運輸のドライバーは過酷じゃないの?
- ドライバーさんって過酷じゃなかったんだ……! よくブラックって聞いていたから、完全に勘違いしてました!
- うちは年間の休みも多いと思いますし、ドライバーひとりひとりが担当するエリアも小さいんですよ。
- そうなんだ。ヤマト運輸だけなのかな?
- 他社さんのことはよく存じ上げないのですが……。うちは、行き届いたサービスをするために、エリアごとに荷物を集約する『センター』を全国に約6,000のセンターを設けています。また、お客さまが荷物を発送する・受け取れる直営の拠点数としても全国約4,000か所あります。各センターの担当地域が狭い分、各ドライバーの担当エリアも小さくなるわけです。
- ドライバーの働き方について言えば、弊社では2017年2月に『働き方改革室』を開設してからというもの、働く環境を良くするための活動に今まで以上に取り組んでいます。
- 働く環境を良くする活動?
- はい。例えば、ドライバーがしっかりと休憩をとるために、センターに休憩室を整備したり、12〜14時の時間帯指定枠を廃止したり、休憩時間中はドライバー専用の携帯端末を手放すことを徹底したりとか。
- そ、そんなことやってたんですか!?
▲ドライバーさんが持つ携帯端末。他のスタッフやお客様からの連絡がここに入ってくる=手放すときっちり休憩できる!
- 弊社に在籍するフルタイマー契約社員、約5000人を正社員登用したり。
- この不景気な時代に〜!?
- 他にも、様々なことに取り組んできました。まだまだ完璧に行き届いているとは言えませんが、うちは今何よりドライバーの業務負担軽減に一番投資をしているんです。
SECTION03どうしてそんなにドライバーさん思いなの?
- しかし不思議です。会社が発展するために必要なのって、『サービスの充実』とか『利益重視の戦略』なんかだと思っていました。どうしてそんなにドライバーさんの働く環境に投資をされてるんですか?
- そもそもまず、会社は『存続』しなければいけません。インターネットが発展し、少子高齢化も進む今、間違いなく通信販売が増えるのは目に見えていますよね。となると、会社の存続のため必要なのは荷物を配送するための人手。働き方改革は、いかに人材を確保するかに重きを置いた施策なんです。
- 人材の確保って、求人記事を出すとか、広報をたくさんするとかじゃダメなんですか?
- それだけじゃないんです!まず、人材を確保するには、多くの方に『ヤマト運輸で働きたい』と思ってもらわなければならない。そのためには、沢山のお客様に接する配送の段階で、良いサービスを提供する必要があります。
- ふんふん
- で、お客様にサービスをご提供するのは、荷物を届けるドライバーですよね。そのドライバーが良いサービスを提供するには、良いパフォーマンスを発揮出来る環境が必要ですよね。つまり、ドライバーの労働環境を改善することが、会社の存続に繋がっているんです!
- そ、そこまで繋がってたのか〜〜!
- 例えば、社内に託児所を作ったりもしました。主婦の方が働きにくい環境だという理由で、働ける人を限定している場合でもないですから。とにかく今は、あらゆる層のドライバーに向けた労働環境の改善に取り組んでいる最中です。
- なるほどなぁ。働く環境が良くなると、『うちの会社いいよ』ってドライバーさんが友達に伝えてくれるかもしれませんしね。一時期話題になったロボネコヤマトなんかも、なにか関係しているんですか?
▲ヤマト運輸とDeNAが発表した自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」。仮に自動運転技術が実用化された場合の荷物の受け取り方を検証しています。荷物を載せた専用車両が地域内を回り、お客様の好きなところ・好きな時間に荷物をお届けする、まさに次世代の配送サービスです。
- そうですね。宅配ロッカーやコンビニ受け取りもそうなんですが、お届け方法のチャンネルを増やすことにも取り組んでいます。今後必ず配送量は増え続けますし、ドライバーが届けるというチャンネルだけではいつか頭打ちしますから。それに今のドライバーの業務負担の軽減も必要ですしね。
▲全国各地に設置されている宅配便ロッカー「PUDOステーション」。お客様の在宅・不在関係なくお届けできて、設置場所によっては24時間出し入れ可能な優れもの!
- ただ未来的なことをしたいという話ではなく、あくまでも『働き方改革』だったり、増えていく配送量にどう対応していくかという考え方をしています。
SECTION04運輸業=接客業? ドライバーならではの接客術って?
- いやぁ、まさか労働環境の改善が会社の存続に関わっていたとは驚きでした。細やかな仕事を担う現場のスタッフって、会社が大きければ大きいほど粗雑に扱われがちだと思っていたので……。
- ドライバーという仕事自体、他の業界と比べたら大変な仕事だと思います。一日中歩き、時には走り、運転し、労働時間も長め。その上でお客様に良いサービスを提供しようと頑張ってくれているわけなので、環境は十分整えないと。
- やっぱり大変なお仕事ですよね。しかも大量の荷物の中には、別にその日に必要でもないしょうもないジョークグッズとかも紛れてると思うんですよ……! そう考えると、ドライバーさんってやりきれない気持ちにならないですか? 私もつい最近、金魚の餌一個を通販で買ってわざわざ配達してもらったとこなので、なんだか今、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
- うーん……でも、荷物の中身もどんな思いが込められてるのかも、僕らにはわからないし、踏み込みすぎてはと思うんですよね。 僕らにはわからないお客さまの背景が当然あると思うので、全て大切な荷物をお届けする気持ちでやってますね。
- ドライバーの鑑だなぁ。基本的に孤独なお仕事だと思うんですけど、寂しくないんですか?
- 特に孤独ってわけでもないですよ。お客さまにたくさん接するので。
- わたしたちは、ドライバーの仕事=接客業だと考えているんです。ドライバーは、毎日荷物の数だけお家を訪問しお客様と顔を合わせる上、1日のうち何度も携帯にお客様から連絡が入る。実は、『接客好き』はドライバーの第一条件なんですよ。面接でも、接客が好きかどうか、向いているかどうかは見ていますね。そこが違うと長く働いてもらえないので。
- なるほど! 運輸業という名前だけ見るとモノ(荷物)と向き合うイメージが強いけど、確かに言われてみればそうだ!
- 基本は接客ですね、そこが楽しいところです。だいたいのドライバーにとって、お客さまからの『ありがとう』や『ご苦労様』がやりがいだったりしますから。
- 優等生すぎる回答!『ありがとうがやりがい』って、元気な居酒屋のTシャツに書いてることじゃないですか。
- でも本当なんですよ、逆に楽しみがそれしかないかもしれないですね(笑)。エリア内に沢山のお客さまがいて、少しずつ関係を築けて。何度も接するうちに、『心を開いてくれたかも』って瞬間があったりすると、たまらなく楽しいんですよね。一言でも会話して、距離が近くなればいいなと思いながら配達してます。
▲「やっぱり話しかけられると嬉しいです」と照れ笑いする森さん。この人絶対良い人だ!
- 森さんは、初めからそんな思いで配達されてたんですか?
- いえ、最初は自分本位な考え方でした。配送の回り方も、早く終われるかどうかを重視してましたね。でも、それだけだと面白くないんですよ。 今は、配り方も『午前中指定と一括りに言っても、ワンルームマンションはこの時間だと寝てる人が多いしもうちょっと後に回そうか』とか、『女性の一人暮らしっぽいから恐がられないように配慮しよう』とか、いろいろと考えながらやってます。
- そんなことまで〜!? すっぴんで出た時に目を合わせてくれないドライバーさんがいるんですが、逆に『気遣い』だったんですかね!?
- そうかもしれないですね。完全なオフモードの時に目を見てハキハキ話しかけられても、恥ずかしかったり、あんまり見られたくないって人もいるじゃないですか。僕はなるべく距離を置いたり、目を合わせないようにしています。
- うわー! わざとだったのかー!てっきりすっぴんの酷さに引いてるんだと思ってましたが、お客さまへの気遣いや気持ちの良いコミュニケーションを大事に仕事されてただけなんですね。よかった、救われるー!
- ベテランのドライバーなんて、もう『職人』ですよ! 担当エリアに住んでいる人たちはどんな人たちかということが大体頭の中に入っているので、地域に合わせた最適な配送・対応ができるんです。 また、ドライバーの役割は配送だけではありません。地域ごとの問題や、お客様のニーズを汲み取ることができるのも、地域に根ざして働くドライバーだからこそ。そうしてドライバーが汲み取ってきてくれた意見が、サービスの開発や向上に役立つことが沢山あるんです。
- この世界にしかない技術……おもしろい! そういったドライバーの職人的心得や、森さんのような『お客様思いの接客術』なんかは、社員教育で徹底的に教え込まれるんですか?
- いえ、実はドライバーに関しては、そういう教育的なことはそれほどしていないんです。新人の時に、先輩に付いて実戦から配送を学んだりはしますが、それくらいですね。 なのに、ほとんどのドライバーが経験を重ねるにつれ、同じようにお客様への思いやりや職人的な心得を体得していくんです。会社の中では、それを『DNA』なんて呼んでいるんですが……。
- はい。特に教育熱心な先輩がいたわけでもないですし……。
- うわははは!(笑) それ言っちゃいます!?
- ただやっぱり、先輩や会社から学べることって多いんですよ。だから、ほとんどのドライバーが自然とお客さま思いになったり、職人的になっていくんだと思います。
- この精神って、運輸業ならではの圧倒的な接客の経験値、っていうのも関係してるのかもしれないなぁ。
SECTION05ヤマト運輸がめざすのは「インフラのような存在」
- これからもいろんなサービスが誕生して、運輸業界はどんどん変わっていくと思いますが、ヤマト運輸さんのめざすところってどういった所なんでしょうか?
- お客様にとって、インフラのような存在をめざしたいですね。
- インフラ……! 水道とか電気みたいな、ですか?
- はい。あって当たり前で、普段はそう意識されない。でも、なくなるとものすごく不便になる。そういう風にお客さまに根付いていきたいですね。そのためにも、とにかく人材を確保しないと、と思っています。
- そうですね。ここまでの話でもわかってもらえたと思うのですが、ドライバーの仕事って単純そうに見えて奥が深いんですよ。お客さまとの会話ひとつとっても、相手やシチュエーションによって正解がないし、突き詰めていくと面白い。 ただ、そういったことも仕事で手一杯になってると考えきれないところではあるので、一人でも多く一緒に働いてくれる人がいたら嬉しいと思います。
- 最後に、森さん。この仕事のどこが好きですか?
- ……全部ですかね。
- そ、それ言い切れるー!? じゃあ、ずっと続けられるんですか?
- はい、定年まで続けたいです。ずっと続けて、この人みたいになりたい、って思われるようになれたら嬉しいです。
- もはや泣きそう。森さんにとってのドライバーは天職なのかもしれない……! 藤本さん、森さん、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
SECTION06運輸業界の未来は明るいぞ!
はい! というわけで、ヤマト運輸さんへのインタビューでした。
ドライバーさんの労働環境を整えることが、ゆくゆくは会社の存続に関わる……! 話のスケールが想像の100倍くらいあって衝撃でした!
業界のトップを走る企業が労働環境の改善に努めているなんて、運輸業界の未来はまだまだ明るい…! みなさんの中にある、運輸業界のイメージが変わったのではないでしょうか。
また、ドライバーである森さんのお話も素敵だった〜! 「真心を込めて配達」なんてCMの中だけの話だと思っていましたが、森さんの飾り気の無い言葉から本気の気持ちが伝わってきて、思わず胸が熱くなりました。
もちろん、世の中のドライバーさん全員がここまで気持ちを込めて接客なさっているかと言われれば、そうではないかもしれません。でも、この記事を読んで、皆さんが少しでもドライバーさんを近しく思い、声をかけたくなったなら素敵だな、と思います。
これからは、「ありがとう」を積極的に言うぞ、と心に決めた次第です!
それでは! 社領エミでした。
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